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事務所通信 第100号(2011年07月)

※ 古いものから順に掲載しており、直近の記事は掲載していません。
※ 過去の記事ですから、その内容が現在の法に適合しないことがあります。
※ 一部、記事を省略して掲載していることがあります。

時間外労働手当の支払い請求に対して

既に退職した従業員から、時間外労働手当の支払いを請求する旨の内容証明が送られてきました。

その内容証明には、時間外労働手当の額を算定した根拠が記載されていますが、会社としては、その従業員の時間外労働の実態を把握していません。

これに対して、どのような回答をすべきでしょうか?

T 一般的な注意点

時間外労働手当の請求を行う場合は、請求者である労働者が、時間外労働を行った事実を主張証明するのが原則です。

そのため、労働者から時間外労働手当の請求があっても、請求の根拠となる「時間外労働の時間数」、「時間外労働手当の計算方法」は、労働者の側で明らかにするように問い質すべきです。

又、労働者がタイムカード等の資料を交付するように求めるケースもありますが、裁判所命令ならさておき、労働者(若しくは退職した労働者)からの請求に対し、会社が応じる義務があるのかは、十分に検討する必要があります。

U 消滅時効の主張を行う場合

時間外労働手当の消滅時効は、労働者が時間外労働手当を請求できるときから起算して2年です。

退職してから2年を超えた元従業員から、時間外労働手当の請求が為された場合は、消滅時効の援用を主張して、時間外労働手当を支払わない旨を通知します。

V 根拠となる労働時間が概算である場合

労働者が正確に時間外労働時間を把握せず「1日少なくとも○時間は残業をしていた」等として概算で時間外労働手当の請求を行ってくる場合があります。

その場合は、時間外労働を裏付ける資料の提出を求めます。

W 時間外労働の根拠資料の提出がある場合

労働者から時間外労働の根拠資料として、退社時刻を記した手帳等の提出がある場合があります。

提出された資料を精査したうえで、残業したとされる日に早退しているとか、年休を取得しているとか、事実と食い違う個所を摘出したうえで、反論できる個所は反論して、根拠とされる新たな資料の再提出を求めます。

X 時間外労働の必要性が認められない場合

労働者が時間外労働を行っていた旨を主張しても、実際は同僚としゃべりながら時間を潰していた可能性もあります。

時間外労働の事実そのものが疑わしい場合には、会社として時間外労働が必要となる業務を与えたことはなく、どのような案件で時間外労働を行っていたのかを問い質すべきです。

Y 時間外労働手当の計算が間違っている場合

労働者が独自に算定した時間外労働手当の多くに、計算上の誤りがありますが、時間外労働手当の主張立証責任は労働者側にありますから、使用者側が丁寧に正しい計算方法を教える必要はなく、むしろ正しい数値を問い質すべきです。

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年金の裁定請求は60歳時点で!

1.裁定請求の時期

年金は、受給資格期間を満たしている人が、支給開始年齢に達した時点で、受給権が発生します。

その時点で、裁定請求を行いますが、この請求は、受給権発生日以後のいつの時点で行っても一切損得はありません。

にもかかわらず、下記のような誤解があります。

誤解@

60歳以後も厚生年金に加入しているため、請求しても年金が受給できないと思い請求していない。

⇒在職老齢年金の仕組みで全額支給停止になるとは限りませんので、請求しましょう。

誤解A

60歳以後も厚生年金に加入しているため、年金の一部又は全部が支給停止の場合、退職後に請求すれば、さかのぼって全額受給できると思い請求していない。

⇒在職老齢年金の仕組みによる支給停止が行われる場合は、いつ請求してもさかのぼって支給停止になります。

誤解B

退職後に請求した方が、60歳以後の期間が年金額に上乗せになるので得だ。

⇒特別支給の老齢厚生年金は、59歳11ヶ月の時点までの厚生年金の加入期間より、年金が裁定されます。

引き続き厚生年金に加入する場合は、ひと月ごとに年金額が改定されるのではなく、再就職先を退職した時点で60歳以後の厚生年金の期間分の年金が上乗せされます。

これは、いつ請求しても同じルールで計算されます。退職後については、年金額は増えますが、退職するまでの間の年金は60歳で請求した場合と同額になります。

誤解C

厚生年金に加入していないが、収入が多く、請求しても年金を受給できないと思い請求していない。

⇒厚生年金に未加入であれば、収入の額には全く関係なく全額受給できます。

誤解D

60歳から年金を受給すると、減額されると思い請求していない。

⇒60歳から老齢基礎年金の繰り上げ受給をする場合と混同しています。

特別支給の老齢厚生年金は、60歳から65歳までの間に受給することになっていますから、60歳で請求しても減額にはなりません。

誤解E

年金を繰り下げたいので、請求していない。

⇒特別支給の老齢厚生年金は、60歳から65歳になるまでの間に受給できる年金で、65歳で受給権は消滅(=失権)し、繰下げはできません。

なお、65歳からの老齢基礎年金や老齢厚生年金を繰り下げる場合は、65歳時点で新たに意思表示をすることになります。

誤解F

特別支給の老齢厚生年金は、定額部分が支給されるまで請求できない。

⇒報酬比例部分は60歳で支給されるので、定額部分が支給れていなくても、請求できます。

誤解G

在職老齢年金の仕組みにより、全額支給停止の場合は、退職してから請求する。

⇒60歳以上70歳未満の人が受給する老齢厚生年金は、年金額の一部又は全部が支給停止となることがありますが、その場合でも、年金の請求は60歳で行っておきましょう。

誤解H

基本手当終了後にさかのぼって請求すれば、減額されない。

⇒さかのぼっても、支給停止期間分の年金は支給されません。

2.60歳で請求するメリット

@給与の額や過去1年間の賞与の合計額が変われば、在職老齢年金の額も変わります。
請求時には、全額停止でも、年金が一部受給できるようになる場合もありますから、請求しておきましょう。
そうすれば、年金は自動的に振込まれます。

A退職したときは、退職日の翌日から1ヶ月を経過したときから年金額が改定され自動的に振込まれます。
60歳で請求をしておけば、退職時の手続は不要です。

B65歳時の手続が簡単です。送付されてくるハガキ形式の裁定請求書に署名をして送付するだけで完了です。

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労使のトラブル(45)【懲戒解雇する社員から先に退職願が出された】

■事例

会社員のAさんは、休日に社用車を無断で運転し、相手を死亡される重大な交通事故を起こしました。

会社は、Aさんを懲戒解雇することにし、30日前の予告期間を置いた9月30日をもって解雇することにしたのです。

同社の退職金規程では、懲戒解雇された社員には退職金は支給しないと規定されていましたが、退職金をもらいたいAさんは、「自分はほかの支給要件は満たしているから、解雇日前に自分から退職すればいいはずだ!」という考えで、9月10日に退職願を提出したのです。

しかし、会社は退職願の受理を拒否しています。

*          *          *

この事例では、会社としては退職願を受け取るべきです。

なぜなら、Aさんには退職する権利があるからです。

しかし、それは「労働契約を終了させる」ということであり、それ以上でも以下でもありません。

ですから、たとえ解雇日前に退職が成立しても、懲戒解雇そのものが消えてしまうわけではありません。

従って、会社はAさんに退職金を支払う必要はありません。

会社は退職願を受理してしまうと懲戒解雇ではなくなり、退職金を支払わなければならないと考えているようですが、会社はAさんに退職金を支払う必要はないのです。

Aさんは何とか退職金をもらおうとして、退職願を提出してきたわけですが、たとえ自分から退職しても懲戒処分は消えません。

原則として、期間の定めのない労働契約の場合、会社には社員の退職を拒否する権限はありません。

社員が退職願を提出すれば、会社が同意しなくても退職の申出のあった日から一定期間後には退職が成立します。

「一定期間」とは、通常は2週間、完全月給制の場合は最短で半月、最長で1ヶ月半です。

確かに、Aさんは退職する権利を持っています。

しかし、これはあくまで「労働契約を終了させる権利」であり、退職金不支給の事由があるにもかかわらず退職金をもらえる権利ではありません。

すでに懲戒解雇が決定し、退職金が出ないことが確定している場合には、たとえ解雇日の前に退職が成立しても、会社は退職金を支払う必要はないのです。

現実には、退職してしまい懲戒解雇が行われなかったとしても、懲戒事由そのものが消滅するわけではないからです。

懲戒事由が発覚する前に退職されていたら?

仮にAさんが、行為が発覚する前に退職してしまっていた場合、原則としてAさんには「退職金請求権」があることになります。

しかし、このままでは「悪いことをしても、ばれる前に退職すればトク」といった不公平な結果が生じてしまいます。

そこで、判例では「社員が在職中に永年の勤続の功績を抹殺してしまうほどの重大な背信行為をしておきながらこれを秘匿して雇用契約解除を申し入れ、契約終了後自己都合退職として退職金請求権を行使することは、社会の正義感、公平感に反するから、権利の濫用にあたる」と修正を加えています。

ただし、実際には不正行為が発覚する前にすでに退職金を支払っていたり、就業規則の規定上どうしても退職金を支払わなければならないような場合もあります。

このような場合、社員の不正行為によって会社の被った損害額がわかるのであれば、退職金を支払う一方で損害賠償請求をする方法も考えられます。

しかし、退職金と損害賠償の相殺は、相手が承諾しない限りできませんから頭に入れておきましょう。

このトラブルは、退職金規程に懲戒解雇前の退職に関する定めがないことも一因と思われます。

懲戒解雇となった社員に退職金を不支給とするのであれば、不支給事由を「懲戒解雇とされた場合、又はこれに準ずる場合には支給しない」という形にして、不当な抜け道を封じます。

加えて、この不支給規定には懲戒事案に応じて、一部の減額から全部の不支給まで段階を設けることが望ましいと思われます。

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通勤災害とは

■通勤災害の対象となる「通勤」とは?

労災保険法では、通勤災害の「通勤」の定義を次のように規定しています。

「労働者が、就業に際し、住居と就業場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること。但し、業務の性質を有するもの(出張など)を除く。」

1.「就業に際し」

就業に関する住居〜就業場所間の往復と認められる行為には、概ね始業時刻前2時間以内の出社、又は終業時刻後2時間以内の居残りに伴う移動であることが条件とされています。

尚、通勤は1日に1回とは限らず、複数回の通勤も認められますが、休日に会社へ忘れ物を取りに行く途中の事故は通勤災害とはなりません。

2.「住居」

労働者本人の自宅のみならず、家族を看護するために寝泊まりしている病院、やむを得ない事由で宿泊しているホテル等も住居として認められます。

但し、飲み会で遅くなり電車がなくなったので泊めてもらった同僚の家等は住居として認められませんから、翌朝の通勤途中に事故にあっても通勤災害とはなりません。

営業職など外勤者の場合は、最初の訪問先から最後の訪問先迄がその間の移動も含めて全て就業場所となります。

4.「合理的な経路と方法」

通勤途中でパチンコや買い物などの寄り道をしたら、その瞬間から通勤ではなくなります。

但し、その寄り道が病院での診療、日用品購入、要介護親族の介護など「必要最小限度の日常生活上必要な行為」と認められた場合は、その寄り道後に元の通勤経路に復した後の事故は通勤災害として労災認定されます。

又、原則として通勤途中の逸脱時間や中断時間は通勤中とはなりませんが、その逸脱・中断が用便や駅の売店での新聞購入など「ささいな行為」と認められた場合は、そのわずかな逸脱・中断時間は通勤中として認められます。

5.二重就業者の通勤災害

第1事業所(A会社)から第2事業所(B会社)へ直接移動中で、その移動中に私的行為が一切介在していない場合は、通勤災害に認定されます。

尚、この場合はB会社の労災保険を使う事になり、休業給付基礎日額もB会社の賃金額を基に算定されます。

6.単身赴任者の通勤災害

@
赴任先住居から帰省先住居への移動は、勤務日当日又はその翌日に行われたものは原則として通勤とみなされます。

A
帰省先住居から赴任先住居への移動は、勤務日当日又はその翌日に行われたものは原則として通勤災害とみなされます。

これにより、会社から一旦赴任先へ戻り、その翌日に家族の住む帰省先住居へ移動する途上の事故も、その住居間移動がある程度反復継続性を有しているものである限り、通勤災害として認められます。

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